シティプロモーションの事例紹介
「小林市シムシティ課」などの話題性のある施策を企画実行できる理由とは
宮崎県小林市 総合政策部 地方創生課
今回の事例紹介は宮崎県小林市にお伺いしました。(東京が緊急事態宣言中のため、残念ながらオンラインでの取材です。)
小林市と言えば、シティプロモーション業界では誰もが知っている移住促進P Rムービー「ンダモシタン小林」。そして、人気ゲーム「シムシティ」とコラボした「小林市シムシティ課」。
前回は「ンダモシタン小林」が中心でしたので、今回は「小林市シムシティ課」の面白い企画が連発できる理由についてお伺いしています。
「ンダモシタン小林」以外にも「小林市シムシティ課」もありますね。人気ゲームとの企画、シムシティ世代の私にとってはとても驚きました。
シムシティのゲームを発売されているエレクトロニック・アーツ社さんが、自治体とのコラボ先を探しているという話を聞きまして、手を挙げたのがきっかけで始まりました。まちづくりは本来夢のあることですが、私たち行政職員の仕事は書類上ばかりでわかりづらくなっています。そこで親しみのある「ゲーム」を活用して視覚化することで、誰でも参加できるまちづくりにすることが狙いでした。
メンバーはどのような方達なのでしょうか?
市長と市役所職員と、地元の高校生になります。こちらは昨年度で3年間のプロジェクトを無事に形にして終了しました。
3年間はどのようなことをしたのでしょうか?シムシティのゲーム上で未来の小林市を作るといったことですか?
初年度にゲームを使ったまちづくりを行なって、そこで出てきたアイデアを市役所に提案していただきました。そこで採用された「小林市にインスタ映えスポットを作る」という提案を、2年目と3年目に実現していきました。実際に市内にある生駒高原に、コスモスなどの季節の花を一望できる展望台が設置されました。
ゲームだけでなく現実に街を変えたのですね。すごいですね。この施策を行って何か変わったことはありますか?
高校生たちにとって自分達のまちは日常過ぎて、いろいろなことを見ていないんです。でもこの施策に参加してもらうことで、まちの良いところを積極的に探してもらって、まちの良さに気づいてもらうことができました。小林市は市内に大学がないため、高校生の約7割は卒業後に進学や就職等で市外に出てしまいます。このシムシティ課に参加してもらうことで、市外に出ても地元の良さを覚えていていただきたいです。
「小林市シムシティ課」も「ンダモシタン小林」もそうですが、なぜ話題性のある施策を企画実行できるのでしょうか?
市民参画型のプロジェクトということも大きいですし、組織内にもやりたいことが比較的提案し易い空気があると思います。何より地方創生に携わる自分たちが楽しむことを大切にしていますし、楽しいことを率先してやろうというスタンスでいます。「こんなものが通るのかな?」と思ったことも、けっこう許可されるので、とてもありがたいです。市長も「まずは行動してみなさい」と言ってくださいますのでやりやすいです。
それは本当に仕事がしやすい土壌があるのですね。
ここまでうまくいっている小林市さんには課題や問題はありますか?
やはり人事異動の問題ですね。せっかくノウハウを身につけても3〜5年で異動があるのが普通です。ノウハウの継承は試行錯誤です。経験ある職員と一緒に仕事をしてもらいながら続けています
他の自治体さんでも悩んでいることですね。今後はどのようなことに力を入れていく予定でしょうか?
まずは市役所全体での発信に力を入れていきたいと考えています。シティセールスの担当だけでなく、全ての部署から情報を発信できるようにしていきます。そしてもう1点、戦略の策定です。実は小林市ではシティセールスの戦略が無いんです。
戦略が無いんですね。驚きですね。戦略が無いからこそ、自由にできたのでしょうか。
そうですね。戦略という縛りがない分、自由な発想でいろいろできたところはあると思います。一方で、ある程度市民を含め組織的な方向性を合わせないと無駄が出たり、効果が薄くなってくると思います。そのため、ガチガチの戦略ではなく、今までの自由度を活かせるような形で、シンプルで誰にでも分かりやすい戦略が必要だと考えています。