シティプロモーションの事例紹介
自治体が抱えるシティプロモーション組織体制の課題
埼玉県春日部市 シティセールス広報課
地方創生
2014年に政府から発表されたこの言葉を合言葉に、地方自治体は地域の魅力をプロモーションするために様々な活動を行っています。
これまでの広報活動とは違う専門的な知識が必要なことから、シティプロモーションの専門部署を配置したり、専門家を外部から登用している自治体もあります。
関東圏を対象としたシティプロモーション実勢調査(「関東圏5都県自治体シティプロモーション実態調査 結果」 2019年実施)では、4分の1の自治体が外部人材を採用しています。
春日部市ではどのように外部人材を活用してノウハウを継承しているのでしょうか?
今回はシティプロモーションを実施するための組織体制や人材教育について、前回に引き続き埼玉県春日部市のシティセールス広報課の職員お二人に伺いました。
シティプロモーションの組織体制
春日部市にはシティプロモーションの専門部署としてシティセールス広報課がありますが、市役所の部署の中では比較的最近設立された部署だと思います。ジョブローテーションがあるなかでノウハウの継承はどのようにされていますか
萩原:確かに自治体では3~5年で部署が変わります。シティセールスの業務は5年以上にわたるような長期プロジェクトになることがあるので、一人の担当者が最後までプロジェクト遂行できることは期待できません。
そんな状況だと、人が変わったときに「このプロモーションによって何がしたかったのか」が分からなくなってしまうことも起こりえます。「春日部市シティセールス戦略プラン」のように狙いや計画を明文化しておけば、人が入れ替わったとしても組織としての行動指針はぶれずにすみます。また、数年前の計画を作りっぱなしにして実体と合っていないのも、行動指針がぶれる原因になります。日本全体や市を取り巻く環境は変化するのが当たり前なので、効果測定などを通じて客観的にプロモーションの成否を判断し、必要に応じて改訂していくことが重要だと考えています。
保坂:正確に手続きをすることが重視される業務であれば、これまでの運営ノウハウを引き継げばよいのですが、シティセールスの業務は正解がなく、常に正解が変化する業務なので「現在目標としているものは何か」「これまでどんな狙いで施策を行ったのか」「施策の効果測定の結果はどうだったのか」「それによって方針を変えたのか、推し進めたのか」ということを引き継いでいく必要があると思います。
(画像:「第2次春日部市シティセールス戦略プラン」より引用。春日部市では2013年に第1次プランとして市内向けのシティセールス、2018年に第2次プランとして市外向けのシティセールスの戦略を策定し、実行している。)
シティプロモーションの業務で使う知識はどのように身に着けたのでしょうか
萩原:プロモーションの専門技能を持つ人材を外部登用して、一緒に業務を行ってきました。業務を通じて考え方やノウハウを身に着けてきました。
保坂:専門家を交えた打ち合わせを通じて「誰にプロモーションするか」「競合となる相手は誰か」といったマーケティング分野の視点、知識がないことに気が付きました。マーケティング分野の知識は自分の経験してきた部署では求められなかったので、いい気づきになったと思います。
外部人材を登用する以外に有効な人材育成方法は考えられますか
保坂:マーケティング分野の知識がないことには気づいて個人的に勉強をしましたが、組織として人材育成するのであれば研修があった方がいいと思います。
また、市役所の業務の中には定められたことを正確にやることが重要視されているものも多く、定型外の業務を行うことに抵抗を持つ人も多いです。
シティセールスの施策では目標に対して十分な成果が出ないことも当然あります。「失敗しても改善すればいい」というマインドセットを身に着けるためにも市役所内部の人間が教えるのではなく、外部の研修を受けることも有効だと思います。
対談を終えて
今回はシティプロモーションの実施組織や体制について、前回に引き続き埼玉県春日部市のシティセールス広報課のお二人にお話をお伺いしました。
シティプロモーションという新しい分野で設立された部署特有の課題に対して、マーケティング視点を積極的に取り入れて業務を遂行しているようでした。
取材時点では5年計画の3年目でした。今後は「より深く春日部市と関わり行動を起こしてくれる人」を増やしていくという難しい段階に入りますが、どのようなアプローチをとっていくのか注目していきたいです。