シティプロモーションの事例紹介
広域調査から見た関東のシティプロモーションの現状について
今回は千葉県我孫子市のあびこの魅力発信室にお伺いし、室長の深田さんにシティプロモーションについてお話を伺っています。
前回は「我孫子市のシティプロモーションの現状」について伺いましたが、今回は深田さんが2019年に行った「関東5都県シティプロモーション実態調査」(https://www.city.abiko.chiba.jp/event/machinodekigoto/abicom/r01katsudo/research.html)についてお話を伺っています。
シティプロモーションの広域調査からわかったこと
今度は深田さんが行った「関東5都県シティプロモーション実態調査」についてお聞かせください。ここまで詳細なシティプロモーションに関する広域調査結果というのはないので、私たちの研究会でも活用させていただいております。どうしてこのような調査を行うことになったのですか?
直近では、事業構想大学院大学が2018年に「全国自治体シティプロモーション実態調査」という全国を対象にした広域調査はあったのですが、「我孫子市が属する首都圏の競合する関東自治体の取組について俯瞰したい」という考えで、関東の5都県に絞って行いました。もちろん、全国調査も非常に有益なのですが、関東とそれ以外の地域では予算額や使っている媒体など地域により状況が違うのでは?という疑問がありました。
調査を行う上でどのようなご苦労がありましたか?
関東の他の自治体の現状を可能な限り正確に知りたいという思いがありましたので、回答率を上げるために努力をしました。シティプロモーション関連の課の方と積極的に交流をしたり、県主催の勉強会があればそこで告知をさせてもらえるようにお願いをしたりしました。お陰様で同大学院大の全国調査では9%でしたが、今回の私の調査では6割もの自治体の方にご協力いただけました。
調査結果の中で一番驚いたのはどのような結果ですか?
いろいろとあるのですが、やはり各自治体の年間予算と人口規模の関係です。全国調査の結果では、「シティプロモーションに関する年間予算と人口規模は比例しない」とあったのですが、私が行った関東5都県の調査では比例関係になり、自治体規模が大きいほど予算規模が大きくなりました。人口5万人未満の自治体と20万人以上の自治体では最大で8倍もの差がありました。
深田さんの当初の疑問点通り、全国調査とは違う傾向が出たのですね。他にも何かわかったことはありますか。
新型コロナウィルスの影響で今後はどうなるかはわかりませんが、2018年までの予算額を見るとシティプロモーションの予算額は全体的に増加傾向です。人口20万人以上の自治体では平均約1.2倍伸びていますが、5〜20万人規模の自治体になると平均で4.7倍も増えております。規模が小さい自治体は厳しい財政状況の中でも、危機感を持って人口増加の施策に力を入れているように思いました。
私たちが一番興味を持った結果は、Q22の「動画の制作について、仕様書に再生目標値や視聴数など、KPIを設定していますか。」に対して、KPI設定をしているのはわずか2%だったところです。さらにQ23の「動画や冊子の効果検証は、実施していますか。」は実施しているのは25%と1/4程度というのも驚きました。
これも印象的な数値でしたね。一方で、先ほどの話にも出ました指標の効果測定の難しさの問題はあります。ただ漠然とKPIを設定していれば良いのか?どんなKPIを設定すれば良いのか?という問題もあるので、KPIを設定していないから一概に悪いとも言えないと考えています。
今後、この調査はどのように活用されていきますか。
今回だけの調査ではもったいないと思っております。このようなデータはオープンデータにして多くの自治体が活用していくと、さらにシティプロモーションの施策が無駄なく効果的になっていくと思います。今後、どこかの機関や団体が継続をしていただくことを期待したいです。
私たちも関東以外で同様なシティプロモーションの広域調査を行っていく予定ですので、結果が出ましたらデータの比較などで議論させていただけますと幸いです。
ぜひ頑張って調査してください。私は、地元の関東圏を調査しましたが、東北、東海、関西など地域ごとの調査は非常に有意義だと考えています。結果が出ましたら、是非共有させてください。