シティプロモーションの事例紹介
愛媛県西条市のファンクラブによる関係人口の取り組み
西条市役所 経営戦略部 シティプロモーション推進課
今回の事例紹介は、愛媛県西条市にお伺いしました。西条市といえば関係人口の取り組みが有名ですが、宝島社出版の「田舎暮らしの本」の「2021年版 第9回住みたい田舎ベストランキング」でも全4部門で全国1位に輝くという快挙を成し遂げられました。
今回はたくさんの施策の中から主に「関係人口」と「移住施策」を重点にお話を伺いたいと思います。
西条市ではいつ頃からシティプロモーションを始められましたか。
現在の玉井市長が就任した直後の平成29年から始まりました。実はシティプロモーションを始めたのはあまり早い方ではなく、むしろ後発ですね。最初は担当が一人だったのですが、愛媛国体の担当だった私が国体が終わってから異動になって入り、2名になりました。現在は4名で担当しております。
始まった当初は、西条市にはどのような課題や背景がありましたか?
当時の西条市には大きく2つの課題がありました。若年層の人口流出と認知度です。こちら(図1)の人口動態のグラフを見ていただくとわかるのですが、20〜24歳の人口が突出して下がっていることがわかります。市内には大学がないため、大学に進学をする人たちは市外に出て行ってしまうという現実があります。併せて、その半数が卒業後も地元に戻って来ません。この世代の人たちは次なる地元産業の担い手なので、一人でも多く戻っていただきたいという気持ちがあります。
他の自治体でも同様なことが起きていますが、厳しい現実ですね。もう1つの認知度の方はどのような課題がありますか?
こちら(図2)のグラフは愛媛県内の自治体の認知度を表したものなのですが、幸い愛媛県内では上位にあるのですが、上位とそれ以外の差が大きく、西条市の認知度は3割もないことがわかりました。西条市の情報に触れる機会がないため、我々の市が認知されていなかったと思います。いわゆる発信力の弱さですよね。
これらの課題をシティプロモーションで解決をしていくことがスタートだったんですね。
そうですね。西条市のシティプロモーションは最終目標を「移住・定住」とはっきりと決めています。戦略にはターゲットアプローチとして、市外向けのプロモーションと市内向けのプロモーションの2つを掲げていますが、同時並行は難しいので、まずは市外向けのプロモーションに力を入れて取り組んでいます。
西条市のシティプロモーションというと「LOVE SAIJO」というファンクラブが有名ですね。詳しくお聞かせください。
元々、市外在住の西条市に関わる人たち向けに「うちぬき倶楽部」という年会費1,000円の倶楽部がありました。それ自体も良い施策だったのですが、さらに発展するために、思い切って名前を含めて組織改編をしたのが現在の「LOVE SAIJOファンクラブ」です。会費も無料にして、市内・市外問わず入れるようになりました。
市内向けの会員はよく聞く話ですが、市外向けも行っているのですね。一般的に言うと関係人口ですね。ファンクラブはどのような活動があるのでしょうか?
市からメルマガを月に2回発行して抽選で特産品が当たる取り組みや、ファンクラブに入っている企業さんとのコラボ企画などがあります。コラボ企画では、地元のスポーツ店が“LOVE SAIJO”のロゴの入ったポロシャツを作って販売してくれたり、地元に支店がある大手小売店でもTシャツを作って販売してくれたりと、我々の想像以上に広がっていて驚きました。
現在どのぐらいの人たちが入会されているのでしょうか?
現在、個人会員が2,877人の団体会員が137団体です。こちらの図(図3)にあるように、もちろん西条市民が一番多いですが、我々の移住定住のターゲットである関東の方達が27%を占めています。また、年代的にも20〜50代の人たちが非常に増えています。
きちんとシティプロモーションの最終目標を着地点として捉えて実行されているのですね。ファンクラブ以外にもローカルベンチャーの誘致などをされていると聞きましたが。
ローカルベンチャー誘致・育成事業のことですね。3名のコーディネーターと10名の起業家を募集して、地域の様々なミッションに取り組んでいただいております。このような方達がまちの人たちとつながっていろいろなチャレンジが生まれて、少しずつまちに活気が出始めています。
具体的にはどのようなことでしょうか?
いろいろあるのですが、その中でも自分が一番関わってとても興味深かったのが、商店街の空き店舗を活用したイベントです。起業家の方に、西条市内のある駅前を再活性化するためのイベントの企画段階から参加していだきました。その方のアイデアで、空き店舗を活用してお化け屋敷を開催したところ、行列ができるくらい盛り上がりました。ただイベントの日に盛り上がっただけではなく、そのイベントがきっかけでその空き店舗を知った家庭教師グループが、翌月からその店舗に入ることになったのです。
このように、私たちだと気づかないようなまちの資源を活用して、様々なチャレンジを次から次へと行っていただき、まちが楽しくなっています。