シティプロモーションの事例紹介
愛媛県西条市の全国1位の移住促進施策と今後の課題
西条市役所 経営戦略部 シティプロモーション推進課
今回の事例紹介は、愛媛県西条市にお伺いしました。西条市といえば関係人口の取り組みが有名ですが、宝島社出版の「田舎暮らしの本」の「2021年版 第9回住みたい田舎ベストランキング」でも全4部門で全国1位に輝くという快挙を成し遂げられました。 前回は主に「関係人口」の取り組みについてでしたので、今回は移住定住の取り組みについてお伺いしたいと思います。
宝島社出版の雑誌で「住みたい田舎ベストランキング」で全4部門(「総合部門」、「若者世代が住みたい田舎部門」、「子育て世代が住みたい田舎部門」、「シニア世代が住みたい田舎部門」)で全国1位になられたそうですね。おめでとうございます。
ありがとうございます。本市では、移住推進課とシティプロモーション推進課が連携して移住施策に取り組んでいます。ですから今回のランキング結果は非常にうれしかったです。
シティプロモーションと移住促進を分けているのも珍しいと思います。移住促進担当は何名で担当されていて、どのように仕事を分けているのでしょうか?
移住担当課は、シティプロモーション担当課ができた翌年にできました。こちらも当時は係員2名の体制でしたが、現在は6名で担当しております。移住相談窓口や移住フェア、移住体験ツアーなどは移住推進課、それを情報発信面で支援しつつプロモーションするのは私たちが担当しています。
どのようなところが他の自治体と違うと思いますか。
移住体験ツアーなのですが、他の自治体では子育て施設や居住地域や“場所“を紹介することが多いと思います。本市では、“場所”だけではなくて“人”を紹介します。
“場所“だけでなく“人“ですか?もう少し詳しくお聞かせください。
例えば、「小学生のお子さんがいるツアー参加者」であれば、子供の学校などが気になるじゃないですか。普通に考えれば学校という場所を紹介しますが、本市のツアーは、校長先生にアポイントを取って、校長先生をツアー参加者に紹介します。もし「こんな感じの職業に就きたい」という考えをお持ちの参加者がいれば、同様の仕事をしている会社であったり、近い仕事をしている先輩移住者を紹介します。
そのため、移住する前に市内に知り合いが多くなって、移住しやすいようになっています。
それは素晴らしい取り組みですね。移住後の人間関係がうまくいかなくて地方移住に失敗する記事をよく見かけますが、移住後のギャップ解消にも繋がりますね。
実際にどのくらいの人たちが移住をされているのでしょうか?
お陰様で実際の移住者数も伸びています。平成29年度の移住者は全部で106名で内県外からの移住者は49名でしたが、令和元年度は346名で内県外移住者は229名でした。
実績でもこれだけ伸びているんですね!プロジェクト本格開始前の3倍以上!
最初に課題になっていたUIターン対策はどのようにされていますか?
ちょうど今年度から始まっているのですが、西条市の大阪事務所にもシティプロモーション推進担当が一人配置されており、「将来、西条市に戻ろうか迷っている大学生等にターゲットを絞って、セミナーや個別相談会を行っています。今年の7月から始まった事業ですが、早速3名がUターンしてくれることになりました。
これまた実績までできていて、すごいですね。今後、どのように成長するのか、楽しみですね。
私の目から見ると西条市のシティセールスはうまくいっているように見えるのですが、どのような課題があると思いますか?
嬉しいお言葉ですが、取り組んでいる我々からするとまだまだだと思っています。
課題とする関係人口については私たちはこの図のように取り組んでいます。
この図で言うと、一番下(LOVE SAIJOファンクラブ加入)とその上の階段(ファンクラブメールマガジン、フェイスブック活用など)ぐらいまではたくさんいますが、階段を昇るにつれ、関係性が深くなっていくほど少なくなっています。こうした、関係性の深い方、本市の課題を解決するために何らかの活動をしてくださる方、いわゆる活動人口を増やしていくための取組みはまだまだできていないなと感じています。
繰り返しになりますが、西条市のシティプロモーションの最終目標は「移住・定住」です。そのため、一人でも多くの方にこの階段を上がっていただくことが大事だと考えます。そのためにも情報発信だけでなく、情報を受け取った方の行動変容まで促せるようにならないといけないなと思います。